嶽本野ばら『エミリー』読了

エミリー (集英社文庫)

エミリー (集英社文庫)

レディメイド,コルセット,そして書き下ろしのエミリー.どれも本質的にも表面的にも美しく,ヤラれます.
あらすじだけを考えるとどういったこともない話ばかりなのですが,服や絵画などの芸術への造形の深さや,それらへの作者自身の深い愛が感じられ,とても高尚な物語に昇華させられています.物語に出てくる実在のブランド名や地名は,どこか一般の人からは遠い存在であったりもしますが,それでいても物語にリアリティーを持たせ,どこか不自然な結末を浪漫や美学へと導き,優雅な気持ちで読み終えられる,そんな感じがしました.
『エミリー』の主人公はとても強いです.自分の居場所であるエミキュEmily Temple cute)の服やラフォーレ前にも頼らず,耐えていこうとするポリシー.逃げ場所ばかり探してる自分の見習うべきところです.